2010年12月12日
テーラーシステムと授業・・・佐藤学「教育の方法」を読む5
アメリカ教育学における授業研究が専門分野の一つである佐藤さんの本書から、そのあたりに疎い私は、いくつかの新しい知識を得ることができた。
「第四章 授業の歴史(Ⅰ)欧米」でいうと、次の個所は興味深い。
「近代的な労務管理の方法である「テーラー・システム」は、直接的に学校の経営と授業の展開に影響を及ぼしています。シカゴ大学でカリキュラム研究の科学化を推進したボビットは、テーラーの『科学的経営の原理』(一九一一年)をそっくり援用して、カリキュラムと授業と学びの過程を科学的に統制する方式を提唱しています。ボビットはテーラーの「生産目標」を「教育目標」に置き換え、アセンブリ・ラインの最後の「品質管理」の「テスト」を教育過程の最後の「テスト」に置き換えています。実際、ボビットは学校は「工場」であり、校長は「工場長」であり、教師は「作業員」であり、子どもは「原料」であり、卒業生は「製品」であると言っています。学校を「大工場」と重ねる私たちのイメージは歴史的に根拠のあるものなのです。
ボビットの採用した「テーラー・システム」は、二〇世紀の世界中の学校のすみずみにまで浸透しています。均質な一方向の時間で組織された授業と学び、教科ごとに分割され段階的に組織された教育内容、効率性と生産性を追求して設定される「教育目標」とテストによるその評価、学校経営における分業組織などはその典型です。」P72~3
また、同章のなかでは、アメリカの事例ではないが、次の指摘も興味深い。
「近年の研究は、ベルのモニトリアル・システムが、もう一つの背景のもとで成立した事情を明らかにしています。ベルは、イギリスにおいてモニトリアル・システムを普及する前に、東インド会社の領事としてインドのアシュラム(ヒンズー教の修道院)において、現地の少年を集めて傀儡軍の教育を行いました。この傀儡軍の教育において開発されたのが、(中略)モニトリアル・システムでした。すなわち、モニトリアル・システムは文化の植民地化において成立し普及したのです。」P63~4
いずれも、近代学校における授業史上を考えるうえで重要な指摘である。
「第四章 授業の歴史(Ⅰ)欧米」でいうと、次の個所は興味深い。
「近代的な労務管理の方法である「テーラー・システム」は、直接的に学校の経営と授業の展開に影響を及ぼしています。シカゴ大学でカリキュラム研究の科学化を推進したボビットは、テーラーの『科学的経営の原理』(一九一一年)をそっくり援用して、カリキュラムと授業と学びの過程を科学的に統制する方式を提唱しています。ボビットはテーラーの「生産目標」を「教育目標」に置き換え、アセンブリ・ラインの最後の「品質管理」の「テスト」を教育過程の最後の「テスト」に置き換えています。実際、ボビットは学校は「工場」であり、校長は「工場長」であり、教師は「作業員」であり、子どもは「原料」であり、卒業生は「製品」であると言っています。学校を「大工場」と重ねる私たちのイメージは歴史的に根拠のあるものなのです。
ボビットの採用した「テーラー・システム」は、二〇世紀の世界中の学校のすみずみにまで浸透しています。均質な一方向の時間で組織された授業と学び、教科ごとに分割され段階的に組織された教育内容、効率性と生産性を追求して設定される「教育目標」とテストによるその評価、学校経営における分業組織などはその典型です。」P72~3
また、同章のなかでは、アメリカの事例ではないが、次の指摘も興味深い。
「近年の研究は、ベルのモニトリアル・システムが、もう一つの背景のもとで成立した事情を明らかにしています。ベルは、イギリスにおいてモニトリアル・システムを普及する前に、東インド会社の領事としてインドのアシュラム(ヒンズー教の修道院)において、現地の少年を集めて傀儡軍の教育を行いました。この傀儡軍の教育において開発されたのが、(中略)モニトリアル・システムでした。すなわち、モニトリアル・システムは文化の植民地化において成立し普及したのです。」P63~4
いずれも、近代学校における授業史上を考えるうえで重要な指摘である。
Posted by 浅野誠 at 07:25│Comments(0)
│教育・子育て